2013年8月27日火曜日

Tuckでの一年目を振り返って・・

気づいたらあっという間に過ぎてしまったTuck での一年目を振り返りつつ、MBA受験やTuckへの出願を検討する中で当時自分が抱いていた素朴な疑問やよく説明会などで耳にした漠然とした質問について現時点での私見を記そうと思います。


MBAって本当に役に立ちますか?
一言で纏めてしまうと学位さえ取れば自動的に得られるもの(MBA向け求人への応募資格等)以外、殆どは「自分次第」です。私が入学前に思っていた以上に自分次第でMBAでの生活で得られる効用というのは大きく変わってくる、というのが率直な感想です。

私が今身を置いている環境では非常に協調的&優秀な同級生、教授陣、卒業生、さらにTuckというブランドに信頼を置いてくれている外部の人たちの協力もあり、自分の興味をきちんと行動に移せばしっかりそれが形になる可能性が非常に高いです。これだけ充実したリソースに囲まれて、かつ周囲の指示に従うのではなく自分の自由な意思でやりたいことを追求できる環境は非常に貴重です。

私の場合、夏休み中はインターンをせずに日系企業の人事制度について教授と組んで個人研究をしておりますが、教授のコネでコンサルティングファームのパートナー(Tuck卒業生ではありません)を紹介してもらってインタビュー対象の企業を紹介してもらったり、インタビューの仕方についてアドバイスをもらったりと、これまでの業務の延長上では恐らく実現不可能だったことに取り組んでいます。

他にも課外活動ではSoccer Clubco-chairに就任し、Tuck主催でアメリカ、カナダ、メキシコの三カ国から計16チーム、300人以上が参加したMBA World Cupの運営を担当(ついでに優勝)しました。さらにAsia Business Clubco-chairに就任し、Tuckの中でも非常に人気が高いアジア文化の紹介イベントであるJapan China Korea Night JCK Night)を他の日本人在校生や中韓両国出身の在校生と共に無事成功させ、さらに意欲の高い他のco-chairと次年度のキャリアイベントの企画を開始したりと、色々と手を広げることで貴重な経験を積み、学内外の多くの人と強い繋がりを作ることができました。

社会人として職務経験を得た上で、経営に関する多様な分野において基礎知識を理論立てて学ぶことに関しても、当初思っていた以上に有意義であると感じています。例えば、業務でプロジェクトから生じるキャッシュフローを予測し、プロジェクト全体の価値を評価する、ということを先輩の教えを請うたり、近所の本屋で買った本を読み込んだりするなどして、時には首を捻りながらやってきましたが、コーポレートファイナンスのベースとなる理論や知識を改めて一からきちんと学び直すことで知識の抜け漏れを認識できました。とりあえず使い方だけ知っていた道具(ex. CAPM, black scholes)の意味も今では正しく理解しています。

Tuckのコア科目(必修科目)では、上記のような道具の前提知識となる統計や資本市場について改めて学んだことで頭の中が一気に整理されました。ファイナンスだけでなく、マーケティングやオペレーションなど他の分野でも同じ考え方がベースになっていることが珍しくないことを認識でき、個々の分野を単発で学ぶよりも格段に理解が深まったと感じています。

もちろんこれらの知識はその分野で一定程度業務経験を積めば、当たり前のことばかりと感じることも否定はしません。そういった場面が一つや二つならまだしも多すぎても時間の無駄になってしまうので、日本人でMBA留学をする方の平均年齢が恐らく30歳を超えていると思われる中で多くのプログラムの学生の平均年齢とも近い27歳-29歳くらいで留学するのが一番良いのではないかと個人的には思います。尚、Tuck の場合コア科目に関しては事前に試験を受けてエグゼンプト(履修免除)が認められれば、代わりに選択科目を履修することも可能です。一方で、後述するスタディグループでの経験もTuckで得られる貴重な経験の一つなので、あまり多くの科目をエグゼンプトすることはお勧めできません。


とある日の授業開始前の風景。慌てて宿題を出す人もちらほら。



MBAでリーダーシップを磨くことは可能ですか?

可能だと思います。ただ同時に必ずしもMBAでなくても良いとも思います。ハードスキル系の授業同様にリーダーシップのようなソフトスキル系の授業でも体系的な知識を理解しておくことは非常に有用だと思います。例えば異なるリーダーシップスタイルの分類方法、それらがより効果を発揮しやすい場面、自分が得手/不得手としているリーダーシップスタイル等を理解しておくことは実践の場に於いても役に立つのではないでしょうか。(非常に単純な例ですが、時間が限られている局面ではあれこれ説明するよりまずはトップダウンで指示を出してチームを動かす方がよいとしたら、自分はそのようなチームの動かし方が得意か否か?そして不得意だとしてら、どのように弱みを補うか?etc.

一方で、結局それらは実践に移さないと本当に身に付くものではないというのは恐らく多くの人が感じる部分だと思います。やはり、プログラム側から与えられたこと以外にも積極的に取り組み、その中で課題だと感じたことを克服できるように、再度新たなことに取り組む、という反復運動をしていくのがリーダーシップを磨く一番の近道なのではないでしょうか。時間さえ許せば自分の意欲次第で異なるフィールドの訓練の場が簡単に多く見つけられる、周囲が積極的にフィードバックを与えてくれる、などどいった点でMBAは魅力的な環境だと思います。


Personal Leadershipの授業で配られた個人のリーダーシップスタイルを分析したファイル。元上司、同僚からのフィードバックもあり大変参考になります。


スタディグループはどんな雰囲気ですか?何が得られましたか?

最初は協調的な校風で知られるTuckとは言え、殆どの場合お互い初めて顔を合わせるメンバーなので、和やかな雰囲気ながらもかなりの緊張感があります。周りに「コイツできる!」と思わせるため(もしくは「コイツできないな・・」と思われないため?)全員アクセル全開で走るので衝突も起きやすいですし、非常に疲れます。ただ徐々にお互いの得手不得手を理解して、チームとしていかに良いアウトプットを出すかに軸足が動いてくるので、次第に緊張感もほぐれ、最終的には非常に仲が深まるグループが多いです。

特に最初の二学期(Fall A/B)を共に過ごすグループは、Tuckに来て初めてのスタディグループで、数ヶ月間は家族よりも長く時間を共に過ごし、多くの課題を乗り越えた仲間としての連帯感が強まるので、Tuckの中でも特別な友人になります。

私のグループは昨年の秋から月1回以上のペースで食事会をしていますし、学内でのパーティーがあるとよく人ごみからメンバー全員を見つけ出してグループで写真を撮ったりと相当な仲良しです。と、書いてる傍からメンバーの一人から残暑見舞い兼次の食事会の招待が届きました。次回は夫々の夏の思い出話で大いに盛り上がりそうです!

まとめると、スタディグループのベネフィットとしては大きく二つあると思います。一つは上記にて書いた様な特別な友人たちが得られることは間違いありません。もう一つは、授業では時間の都合上発言の機会が限られていますが、スタディグループでは時間が多くあるので、しっかりと個々の意見を聞いた上で深い議論をし、より理解を深めて授業に臨むことが出来ます。一年目でも最後の二学期(Winter, Spring)ではスタディグループが設定されない選択科目もありますが、自主的にスタディグループを組んで予習/復習をすることがあったので、それだけ皆スタディグループの効果を感じているのだと思います。


Fall Termのスタディグループメンバーと我が家でディナー。日本食を堪能してくれたようです。


日本人としてどのような形でプログラムへの貢献をしていますか?

先に挙げたもの以外では、春に行ったJapan Trekを通じて多くの同級生に日本という国に対する理解を深めてもらうことが出来ました。参加者には非常に喜んでもらい、私にとっても思い出深いイベントでした。詳細については別の投稿をご覧下さい。Japan Trekの盛り上がりを受けて今年は韓国人同級生によるKorea Trekも企画される可能性があり、波及効果も期待されます。

さらにTuck Ambassadorとしての活動があります。Tuckは米国内の知名度が非常に高いのに比べて国際的な知名度(特にアジアや南米)は相対的に低いという課題があります。出身国に於けるTuckの知名度を向上させるために立候補した生徒が各国のAmbassadorとして様々な企画に取り組む仕組みがあり、私はTuck Japan Ambassadorの職に就きました。83日に東京で行われた恒例のInfo SessionAmbassadorの活動の一環です。さらに卒業生のネットワークを強化して、よりTuckのプレゼンスを日本で増やすような取り組みを卒業したばかりのアルムナイと協力しながら現在進めています。

以上、気づいたら非常に長い投稿になってしまいましたが、Tuckでの一年目を質疑応答形式で振り返ってみました。MBATuckについて具体的なイメージを持つのに少しでも役に立てば幸いです!

S.Y (T'14)