2015年4月4日土曜日

Tuck生活を終えるに当たって

Tuck3学期制(秋学期・冬学期・春学期)を採用しています。実はこれはダートマス大学の影響を受けています(念の為ですが、Tuckはダートマス大学の大学院です)。

まだアメリカで大学と言えば「男子校」が当たり前だった時代、ダートマス大学には3,000人の男子学生が居ました。時代が変わり、女性も大学教育を受けられる風潮になっていく中で、ダートマス大学には共学化に関する賛成派と反対派が居ました。反対派は何故か「男子学生数3,000人を維持する」という数にこだわりました。そういうことであれば、「学校の規模自体を大きくして、男子学生3,000人を維持したままそこに新たに女子学生が加わる形にすれば良い」と考えるかもしれませんが、学校規模を拡大するには教室や寮を含めたキャンパス設備の拡大が伴う訳で、難しい状況でした。そこで賛成派が考え出したのが、3学期制でした。一年間を4学期に分けて、学生は4学期の内3学期間学校に居る必要があるということにしました。これによってダートマス大学は学生数を4,000人に増やしながらも、物理的にキャンパスに居る学生の数はいつでも3,000人という状況を作り出しました。これがダートマス大学に於ける3学期制の始まりであり、また目出度く共学校となりました。

さて、私はTuck2年生の春学期という最後のtermに突入しました。あと2ヶ月強で卒業です。このブログでも書き続けてきた通り、”What I can say with confidence, is that choosing Tuck was the best decision I have ever made in my life.”ということです。留学前に周りから散々聞かされていた「MBAは人生で最高の2年間だよ!」という言葉に嘘はなく、私は「今この瞬間がこれまでの人生で最も楽しい」と胸を張って言うことが出来ます。またTuckの魅力は同級生が全てだと思っているので、同級生と共に過ごせる時間が残りわずかとなっていることに寂しさを感じつつ、今は「これから自分は社会に貢献していくんだ!」という前向きな気持ちで居ます。

先日Associate Deanから我々2年生宛に送られてきたメールがなかなか素敵でした。「いよいよTuckに於ける最後のtermですね。あなたたちが入学前に望んでいたようなknowledgeintegrityleadershipfriendshipsは得ることが出来ましたか?最後のtermも引き続き、本当に一生懸命に勉強して下さい。それによってこれら4つの要素を、更に強化することが出来るでしょう。Live deliberately, live deep, and enjoy life!

私はAssociate Deanが述べている4つの要素をTuckに来て強化することが出来たと思っています。そしてそれはやはり全て同級生のおかげだと思っています。私のような年齢になって青臭いことを言うようですが、Tuckに来たことで自分は人間的に成長したと思います。同級生たちを友人・ライバル・目標として捉えることで、これまでより更に意識を高く持てるようになりました。私は、今では以下5点を強く認識しながら毎日を生きています。
● GET INVOLVED(参加する、意見を持つ、忙しいフリをしない)
● 上手くいかなかったら自分のせい、成功したのなら皆のおかげ
● 文句を言うなら提案しろ、提案するなら行動しろ
● 迷ったら難しい方の道を選べ
● 自分の方から歩み寄る、相手の意見も取り入れる、変なプライドは捨ててしまう

Tuckに来て私の人生は変わりました。感謝の気持ちでいっぱいです。

よしかん(T’15

授業紹介: Managing Corporate Wrongdoing Scandals

今学期から新たに加わった授業の中では、今のところMocciaro教授Managing Corporate Wrongdoing ScandalsMCWS)が一番人気のようです。私もかなり気に入っていて、予習に相当の気合いが入っています。

ビジネススクールでは、リーダーシップやストラテジーの授業で頻繁に企業の失敗事例について学びます。そして「リーダーとはどうあるべきか」であったり、「最適な組織とは何か」を議論したりします。しかしこれら失敗事例の事後検証は「机上の空論」になってしまうこともあります。つまり「しっかりとした戦略を持ち、皆がそれに沿った形で行動出来るよう社内の環境作りに努めるべきだ!」と言っても、それは「世の中いい人ばかりだったら犯罪は起きない!」と言っているのに近いものがあります。

MCWSでは、「あの時こうするべきだったよね」と結果論を語るのではなく、「はい、実際に問題が起きてしまいました。さあ、あなたは何をしますか?」という形で企業の不祥事を議論します。これまでのMBAの勉強で頭でっかちになっている我々は、「とにかく迅速に対応する、しっかりと謝罪の意思を示す、今後のプランを明確に提示する」が正解だと考える訳ですが、我々の想像とは全く異なる方向に話が進んでいった数々の事例紹介が本当に興味深いです。不祥事を犯してマスコミに徹底的に叩かれたものの、その企業の顧客たちは特に怒っていなかった為、誠意ある謝罪は示さなくても何とかなってしまった企業。企業が不祥事を犯して詳細調査が進む中で、CEO個人のプライベートでの問題が多数発覚し、そちらにフォーカスが移る中で企業の不祥事がほとんど忘れ去られてしまったケース。などなど。不祥事が発生した際には企業として「すぐに謝罪する」というのがもちろん基本スタンスなのですが、MCWSの授業を通じて、「最適な謝罪タイミングはいつなのか?」、「謝罪の対象を誰として捉えるのか?」、「どのツールを使って、どこまで反省を示すのか?」ということをより深く考える癖がついたように思います。

● 組織的(システムの)問題だったのか?
● 事前に予知出来るようなシグナルは発信されていたのか?
● その業界に於いては当然と看做される行動だったのか?
● 社内文化が原因だったのか?
● 誰の責任なのか(ここでは立場上の責任者というより、原因となったのは誰かということ)?

今のところ、私のtakeawayは以下2点です。
1.企業不祥事に関し、多くの場合はシグナルが事前に発信されている
企業不祥事の中には、交通事故的な、突発的に発生するものがあります。それらは、はっきり言って回避不可能です。しかし交通事故的な不祥事は全体の一部に過ぎず、多くのものに関しては、予知出来るようなシグナルが事前に多数発信されています。従って、それらシグナルを見失わないことが重要になってきます。

2.日々の態度が、周囲の対応を決定する
CEOとして、企業が大きくなればなるほどそうですが、社内で起きていることを100%把握するのは不可能です。問題が発生して、「そんなことが社内で起きているなんて本当に知らなかった」ということもあるでしょう。自分の全く知らない内に問題が発生して、そしてCEOという理由で責任を取らされて辞任に追い込まれることもあるかもしれません。先に述べたように交通事故的不祥事も存在する訳で、そこに巻き込まれたのであれば「運が悪かった」としか言いようがありません。しかしひとつだけ言えるのは、自分の「日々の態度が、周囲の対応を決定する」ということです。普段から傲慢な態度ばかり取っていれば、問題が起きたときに「あいつは叩かれて当然」と誰もが思うかもしれません。逆に謙虚な態度で、それでいて積極的に情報発信をしているCEOであれば、不祥事が起きた際にマスコミも含めて「負けずに頑張れ!」と周囲から応援されるような雰囲気が出来上がることもあります。不祥事を100%回避することは無理です。でも、真摯な気持ちで仕事に取り組むことは出来ます。

まだまだ多くのことが学べそうなので、残りの授業(あと5回)が本当に楽しみです!

よしかん(T’15