2015年2月28日土曜日

授業紹介: Inplementing Strategy

以前に紹介したLGEと並んでTuckで人気のある授業が、Govindarajan教授によるImplementing Strategyです。大人気の為、同じセッションが3個(各々週2コマ)用意されており、単純計算でもTuck2年生の約8割がGovindarajan教授の授業を取っていることになります。

リバース・イノベーションの生みの親であるGovindarajan教授Global Thinkersでも3位に選ばれており、私もキャンパスを訪問する受験生からこの教授に関して質問を受けることが非常に多いです。これまで受験生の人たちに対して私は、「まだ実際の授業を受けたことがないのでよく分からない」と答えてしまっていた部分があるのですが(笑)、ようやく今学期から彼の授業を受けることになりました。組織の中でのstrategyの組み立て方は1年生の必修授業で学ぶのですが、2年生の選択授業であるImplementing Strategyでは、企業がstrategyを実践に移していく際の問題点に着目しながら組織の最適運営を考えます。

● Strategyとは10年後の企業の在り姿を考え、そこから「逆算」して今何をするべきかを考えること。現状を把握して、それを「積み上げ」、延長線上に企業の未来予想図を描くことではない
● 企業の中でstrategyを策定する際は、現場からのbottom-upで中身が詰められていくべきであって、経営層からtop-downで内容が固まっていくべきではない
● Strategyは次の3つの問いに対する回答になっている必要がある。顧客は誰なのか?顧客が求めているvalueは何なのか?我々がそのvalueを提供する為のvalue chain architectureは何なのか?

 
毎回授業ではひとつの企業を取り上げ、非常に細かく分析を行い、クリアカットな結論を出します。教授が(プロなので当たり前のことではあるのですが)相当な時間を掛けて授業の準備をしてきていることが感じられます。今まで扱った企業の中では、Johnson & Johnson3Mが個人的には興味深かったです。最近はGoogleFacebookなど急スピードで成長する企業が注目されますが、長期間に亘って第一線で活躍を続ける企業の分析も有用です。1980年にFortune 100に入っていた企業で、2015年現在もFortune 100に残っている企業は22社のみ(含むJohnson & Johnson3M)とのこと。入れ替わりの激しい時代であることは間違いのないことである一方、どのような時代になっても力を発揮し続けることが出来る企業も存在するのです。と、こういう話をしていると、ジム・コリンズのビジョナリカンパニーを思い出す人も多いかと思います。Govindarajan教授も、経営者が5水準リーダーであることはとても大切な要素であると授業中に常々述べています。

よしかん(T’15

2015年2月22日日曜日

BURN THE SHIPS

TED Talksに似せたTuck Talksというイベントが一学期に一度学校で開催されます。ビジネススクールに通う学生はバックグラウンドが多様で、またスピーチ上手が多いので、私として非常に楽しみにしているイベントのひとつです。先日開催された今学期のTuck Talksでは6人の学生と1人の教授が話をしました。『パレスチナ自治区に住んでいたユダヤ人として』、『17歳で私がガンを宣告されたとき』、『ボツワナに住んでいたから気付いた家族との絆』、『誰よりもシンプルに生きる為の起業』、『満足のいく教育が受けられなかったとしたら誰のせい?』、など興味深いテーマばかりでした。

個人的には、仲良し同級生のチャールズ(元プロスキーヤー・アメリカ代表ワールドカップ選手)の話を最も楽しみにしていました。私は普段から「彼は話が上手いな」と感じていましたが、Tuck Talksのように彼の為にあるようなイベントで、見事に期待に応えてくれました。

● 普段から話をするのが大好きな人なので、やや長めのスピーチになると思いきや、話はきれいに短く纏まっていた
● 数え切れないほど興味深い話を沢山持っていると思われる中で、テーマの選び方自体が優れていた
● スキーに重点を置いた話になると思いきや、スキーに触れつつも、上手に話を一般化していた

肝心の内容ですが、「久々にプロスキーヤー仲間に会うとパワーを貰える」というところから話が始まりました。チャールズ自身は引退しているのですが、「意識の高い人たちと一緒に居るということが如何に我々にとってエネルギーとなり得るか」を説いていました。スキーヤーにとって最大の大会はワールドカップで、その次に重要なのは各国で開催される国際大会のようです。ワールドカップと国毎の大会に出場する選手のタイムの差は1/10秒、1/100秒という世界ですが、ワールドカップと国毎の大会では、大会としての重みが天と地ほど違うようです。チャールズは当初ワールドカップに出場することが出来ず、いつまでも国毎の大会にばかり出場していて、「同じ練習を繰り返してもワールドカップに出場出来ないのであれば、この先同じ練習を続けても状況は変わらない」と相当に苦しんだ時期があったようです。

チャールズのスピーチはそこから、エルナン・コルテスが1519年にメキシコを侵攻し”BURN THE SHIPS!”と叫んだ話に移りました。コルテスがメキシコで、自分たちがスペインから乗ってきた船を焼き、自らの退路を断つことによって、全員に前に進むしかないと決意させた話です。「日々頑張っていればいつか全ては上手くいくと思うのではなく、時にはもう一歩踏み込む必要がある」というのがチャールズのスピーチのメッセージでした。そしてスピーチはこのように締め括られました。

Sometimes, failure is not an option. You just have to burn the ships. And when you’ve burned the ships, you will feel good about it.

よしかん(T’15