2015年2月22日日曜日

BURN THE SHIPS

TED Talksに似せたTuck Talksというイベントが一学期に一度学校で開催されます。ビジネススクールに通う学生はバックグラウンドが多様で、またスピーチ上手が多いので、私として非常に楽しみにしているイベントのひとつです。先日開催された今学期のTuck Talksでは6人の学生と1人の教授が話をしました。『パレスチナ自治区に住んでいたユダヤ人として』、『17歳で私がガンを宣告されたとき』、『ボツワナに住んでいたから気付いた家族との絆』、『誰よりもシンプルに生きる為の起業』、『満足のいく教育が受けられなかったとしたら誰のせい?』、など興味深いテーマばかりでした。

個人的には、仲良し同級生のチャールズ(元プロスキーヤー・アメリカ代表ワールドカップ選手)の話を最も楽しみにしていました。私は普段から「彼は話が上手いな」と感じていましたが、Tuck Talksのように彼の為にあるようなイベントで、見事に期待に応えてくれました。

● 普段から話をするのが大好きな人なので、やや長めのスピーチになると思いきや、話はきれいに短く纏まっていた
● 数え切れないほど興味深い話を沢山持っていると思われる中で、テーマの選び方自体が優れていた
● スキーに重点を置いた話になると思いきや、スキーに触れつつも、上手に話を一般化していた

肝心の内容ですが、「久々にプロスキーヤー仲間に会うとパワーを貰える」というところから話が始まりました。チャールズ自身は引退しているのですが、「意識の高い人たちと一緒に居るということが如何に我々にとってエネルギーとなり得るか」を説いていました。スキーヤーにとって最大の大会はワールドカップで、その次に重要なのは各国で開催される国際大会のようです。ワールドカップと国毎の大会に出場する選手のタイムの差は1/10秒、1/100秒という世界ですが、ワールドカップと国毎の大会では、大会としての重みが天と地ほど違うようです。チャールズは当初ワールドカップに出場することが出来ず、いつまでも国毎の大会にばかり出場していて、「同じ練習を繰り返してもワールドカップに出場出来ないのであれば、この先同じ練習を続けても状況は変わらない」と相当に苦しんだ時期があったようです。

チャールズのスピーチはそこから、エルナン・コルテスが1519年にメキシコを侵攻し”BURN THE SHIPS!”と叫んだ話に移りました。コルテスがメキシコで、自分たちがスペインから乗ってきた船を焼き、自らの退路を断つことによって、全員に前に進むしかないと決意させた話です。「日々頑張っていればいつか全ては上手くいくと思うのではなく、時にはもう一歩踏み込む必要がある」というのがチャールズのスピーチのメッセージでした。そしてスピーチはこのように締め括られました。

Sometimes, failure is not an option. You just have to burn the ships. And when you’ve burned the ships, you will feel good about it.

よしかん(T’15