2015年4月4日土曜日

授業紹介: Managing Corporate Wrongdoing Scandals

今学期から新たに加わった授業の中では、今のところMocciaro教授Managing Corporate Wrongdoing ScandalsMCWS)が一番人気のようです。私もかなり気に入っていて、予習に相当の気合いが入っています。

ビジネススクールでは、リーダーシップやストラテジーの授業で頻繁に企業の失敗事例について学びます。そして「リーダーとはどうあるべきか」であったり、「最適な組織とは何か」を議論したりします。しかしこれら失敗事例の事後検証は「机上の空論」になってしまうこともあります。つまり「しっかりとした戦略を持ち、皆がそれに沿った形で行動出来るよう社内の環境作りに努めるべきだ!」と言っても、それは「世の中いい人ばかりだったら犯罪は起きない!」と言っているのに近いものがあります。

MCWSでは、「あの時こうするべきだったよね」と結果論を語るのではなく、「はい、実際に問題が起きてしまいました。さあ、あなたは何をしますか?」という形で企業の不祥事を議論します。これまでのMBAの勉強で頭でっかちになっている我々は、「とにかく迅速に対応する、しっかりと謝罪の意思を示す、今後のプランを明確に提示する」が正解だと考える訳ですが、我々の想像とは全く異なる方向に話が進んでいった数々の事例紹介が本当に興味深いです。不祥事を犯してマスコミに徹底的に叩かれたものの、その企業の顧客たちは特に怒っていなかった為、誠意ある謝罪は示さなくても何とかなってしまった企業。企業が不祥事を犯して詳細調査が進む中で、CEO個人のプライベートでの問題が多数発覚し、そちらにフォーカスが移る中で企業の不祥事がほとんど忘れ去られてしまったケース。などなど。不祥事が発生した際には企業として「すぐに謝罪する」というのがもちろん基本スタンスなのですが、MCWSの授業を通じて、「最適な謝罪タイミングはいつなのか?」、「謝罪の対象を誰として捉えるのか?」、「どのツールを使って、どこまで反省を示すのか?」ということをより深く考える癖がついたように思います。

● 組織的(システムの)問題だったのか?
● 事前に予知出来るようなシグナルは発信されていたのか?
● その業界に於いては当然と看做される行動だったのか?
● 社内文化が原因だったのか?
● 誰の責任なのか(ここでは立場上の責任者というより、原因となったのは誰かということ)?

今のところ、私のtakeawayは以下2点です。
1.企業不祥事に関し、多くの場合はシグナルが事前に発信されている
企業不祥事の中には、交通事故的な、突発的に発生するものがあります。それらは、はっきり言って回避不可能です。しかし交通事故的な不祥事は全体の一部に過ぎず、多くのものに関しては、予知出来るようなシグナルが事前に多数発信されています。従って、それらシグナルを見失わないことが重要になってきます。

2.日々の態度が、周囲の対応を決定する
CEOとして、企業が大きくなればなるほどそうですが、社内で起きていることを100%把握するのは不可能です。問題が発生して、「そんなことが社内で起きているなんて本当に知らなかった」ということもあるでしょう。自分の全く知らない内に問題が発生して、そしてCEOという理由で責任を取らされて辞任に追い込まれることもあるかもしれません。先に述べたように交通事故的不祥事も存在する訳で、そこに巻き込まれたのであれば「運が悪かった」としか言いようがありません。しかしひとつだけ言えるのは、自分の「日々の態度が、周囲の対応を決定する」ということです。普段から傲慢な態度ばかり取っていれば、問題が起きたときに「あいつは叩かれて当然」と誰もが思うかもしれません。逆に謙虚な態度で、それでいて積極的に情報発信をしているCEOであれば、不祥事が起きた際にマスコミも含めて「負けずに頑張れ!」と周囲から応援されるような雰囲気が出来上がることもあります。不祥事を100%回避することは無理です。でも、真摯な気持ちで仕事に取り組むことは出来ます。

まだまだ多くのことが学べそうなので、残りの授業(あと5回)が本当に楽しみです!

よしかん(T’15