2014年2月2日日曜日

Exchange to London Business School


Tuckでは2年生のFallターム、若しくはWinterタームに、海外の大学院への交換留学が可能です。今回私は2年目のFallタームを使って、ロンドンビジネススクール(以下LBS)3ヶ月ほど交換留学をしてきました。

交換留学制度 (Exchange Program)とは
Tuckの交換留学先としてロンドンのLBS、バルセロナのIESE、香港のHKUST、インドのISBなど、世界中に交換留学先があります(詳しくはこちら)。特にLBSなどの人気校は競争率が高く、LBS在校生へのネットワーキング、エッセイの提出、そして面接を経て、無事権利を獲得しました。

交換留学をしたいと考えた理由
Tuck1年目のコア科目を通じ、General Managerとしてビジネスを様々な側面から分析する能力はある程度養成できた感はありますが、MBA取得後日本の派遣元に帰国して(当方社費でMBAに来ています)企業のグローバルビジネスを第一線で推進していくためには、さらに一歩踏み込んでダイバーシティに富んだ環境でのコミュニケーション力やリーダーシップ力を養成したいと考えていました。そういったソフトスキルは本や授業よりも、環境から学べる要素が大きいという考えもあり、異環境に身をおいて今まで学んできた事の実践度合いを計りつつ、自分のさらなる改善点を明確化するために有効と考え、Exchange Programを利用することに決めました。

当然Tuckのダイバーシティに富んだメンバーとのグループワーク等を通じ、上記能力の養成は可能と思いますが、1年が過ぎたことである意味環境になれてきた部分があるのも事実で、一度環境を変えて自分に刺激を与えると同時に、Tuckを客観的な視点で見れるようにし、より残りのTuckでの生活を有意義なものにしたいと考えた事も背中を押した理由です。

LBSを選択した理由
1.国際性に富んだ環境
MBAトップスクールの中でもLBSは特にインターナショナル性が高く、約60カ国から来た生徒が一斉に集まる学習環境が魅力でした。また、アメリカのトップビジネススクールのようにアメリカ人が生徒の大半ということはなく、マジョリティのいない真の意味での国際的な環境がそこにあり、自分がPost MBAで実際に対峙することになるはむしろそのような環境ではないかと考え、志望しました。

 2.生徒のマチュア度
LBSMBAの平均年齢が2013年時点で30歳と高く(Tuck2013年時点で27歳)、また、選択科目についてはいずれもMBAExecutive MBAExchange Students等の混成授業になっており、ビジネス経験が高い方の視点や、リーダーシップの特性等も学べるという点に惹かれました。

 3.Post MBAとの関連性
現在派遣元の企業はグローバルビジネスの拡大を急ピッチで行っていますが、ヨーロッパについてはまだまだ未開拓で、伸び白が大きいと考えており、そのマーケットに短時間でも土着し、その国々の理解を深めておきたいと考えたのも理由の一つです。




LBSのキャンパスにて。雨の日は予想外に少なく、素晴らしい環境で学べました。

学業でのTakeaway
1.定量的分析を有効的に挟んだ授業

一般的にはFinanceが有名なLBSですが、StrategyMarketingも定量的な分析にも重きを置いた良いものがありました。例えば、Brand Managementという授業で、先端技術や、モノづくりなどの競争優位性を持たないヨーロッパ企業が、長期的にどのようにブランドを育て事業を拡大したかを学んだのですが、グループワークではBritish Airwaysのブランド価値をアンケートやOne-to-Oneヒアリング等を通じて入手したデータを使って定量的に把握し、戦略を考案するプロジェクトを行いました。また、Corporate Strategyという世界中の企業のケースを通じて、多角化戦略(事業の多角化と、海外進出等のエリア多角化)について学ぶ授業では、とあるケースでM&Aを介しての多角化が本当に成功していたといえるかについて、定性的な議論に加えて、当該企業のバリエーションを実際に行い定量的に分析するところまで発展しました。

2.合意形成のプロセスの多様性

Tuckでのディスカッションでは、アメリカ人がマジョリティをとることで、良い意見を言うことは勿論、発言をする事そのものが重要という、言った者勝ちの文化があると個人的には認識しているのですが(アメリカのMBAはどこもそうなのでしょうが)、マジョリティが存在しないLBSでは、割り振られたチームの国際性に応じて合意形成のセオリーを変える必要がありました。例えばインド人やドイツ人等、緻密で完璧主義の高いメンバーと組んだグループでは、意見の論理性や明確性が最重要視され、意見が良ければ仮にチームの方向性を大きく変えるものであっても、時間やリソースの限界を考慮なしに採用してしまう傾向がありました。当然国柄で常に割り切ることは出来ないでしょうが、一先ずそういう相手とは中途半端に道筋を決めて前に進んでいかず、時間をかけてでもプロセスについて事前合意した上で進めないと、後で痛い目を見るなという所が個人的なTakeawayでした。

3.マチュアな同級生が持つ、リーダーシップスタイル
 
LBSには40歳オーバーの経営者などもかなり多く生徒として在籍しているのですが、彼らは英語が片言であってもグループワークでも議論の大局を読み、議論が停滞化した所で一気に意見を投げ込んで議論の道筋を立てたりするのがうまいという事に気付きました。私も英語力の差を理由にTuckでのグループワークに貢献するのが難しいと思うことがありましたが、議論の流れや各人の意見、そして議論を前に進めるのに何が足りないかを把握し、言い出すチャンスを見つけて意見を投げ込むといったコミュニケーション力で十分にカバーできるのだということに気付けました。


学外でのTakeaway
LBSは都会にあって、かなりエンターテイメントに富んでいたため、共に渡英した妻と一緒に頻繁に出歩いてショッピングやドライブ等ができました。特にイギリスは大英博物館を初めとする博物館や美術館が点在していたり、オペラハウスやオーケストラホールも目と鼻の先にあり、学業以外だけでなく、文化的な視野の拡大もできたと思います。また、3ヶ月も生活しているとその土地が良く見えてきて、消費動向の違いや流行っているもの、文化等々もある程度理解できてきた気がします。また、ヨーロッパ各国へのLCCや電車を使って数時間で格安で旅行が出来たため、普段行けない様な場所へも土日などを使って行くことができました。






訪問先の一部。ロンドンのビッグベン、スペインの白い村フリヒリアナ、
魔女の宅急便の舞台と言われるクロアチアのドブログニク。
 


また、ネットワーキングと言う意味ではLBSの生徒との親交はしかり、LBSに在籍中の日本人とそれぞれのスクールで感じた事などを情報交換したり、LBSに交換留学で来ている他スクールの生徒との交流、さらにはLBSから他スクールに交換留学をする人に同じくTuckからExchangeをする友人を紹介して学校外でネットワークを広げたりする事などができ、学校外でのネットワーキングもすることができました。
 

LBSExchange Studentsとの飲み会。
この日は日本食で、アメリカよりもイギリスの方が日本食の浸透度が高いように感じました。

Tuck VS LBS
ここまでLBSでの体験を中心に纏めてきましたが、折角なので主観ではありますが、両校の比較もしておきたいと思います。

勉強:
当然両方ともトップ校なので授業で学べることの質は高いのですが、教授の授業の進め方や、ケースディスカッション等における生徒の多面的な分析力はTuckの方が高いかなという印象です(英語を母国語としない教授が多いところが理由かもしれませんが)。一方のLBSは、生徒がかなりマチュア、かつダイバーシティに富んでいたことから、教授よりも生徒から学ぶ要素が大きく、ケースディスカッションでもケースに関連した体験談等からのInsightが多くありました。勉強量についてはTuckの方が多いという実感です。LBSでも当然それなりの勉強量は求められましたが、Tuckと比べると宿題量は少なく、その分ケースを読む際も行間を読んで分析するなど、各科目とゆっくり想像力を膨らませて深く向き合う時間が取れた気がします。一方のTuckでの勉強は膨大な情報の波にのまれながら、限られた時間の中で優先度をつけ、瞬発的に想像、応用、そして判断をしていく必要があると感じます(そういうリーダーシップ能力を養成されているという事なのだろうと捉えています)。

ネットワーキング:
LBSはインターナショナル性に富んだ人々が集まる環境が魅力で、世界中の人広く触れ合うことが出来ます。しかし都会にあることで、授業が終ると皆街に散ってしまう傾向が強く(土日は海外で過ごす人も多かったです)、限られた時間と英語力で、その環境に属する多くの人々と深く付き合っていくのは難しいかなと感じました。一方のTuckは大学町にあるため、都会の刺激は数時間ドライブをしてボストンやニューヨークまで行かないと味わえません。逆に田舎にあるメリットとして、勉学はおろか、友人と過ごす時間も作りやすく、一生モノの友人を作るにはこっちの環境の方が僕には効果的かなという印象です。

生活:
LBSのあるロンドンでは日本食を初めとして世界中の料理が楽しめますし、ロンドンだけではなく、ヨーロッパ各国へのアクセスのしやすさを考えると、学校外で楽しめることが数多くあります。一方のTuckはロンドンと比較すると一見見劣りしますが、別投稿(ショッピング観光)にもあるようにそれなりにショッピングしたり、観光するエリアはありますし、また、夏はゴルフ、冬はホッケーやスキーなどのアウトドアスポーツも楽しめます。仕事をしながら休みを取ってはなかなか訪れることができないNew Englandの綺麗な自然の中での生活は、今後の人生二度とできない貴重な経験になるだろうと考えています。

最後に
MBAの取得目的の根幹は様々な分野に関する勉学を通じて経営者としてのセンスを磨くことや、その過程を通じて一生ものの友人を作っていくことであると思っており、特にTuckは大学町に位置していることで、勉強と友人作りに集中できる最高の環境であると考えています。その一方で、MBAの取得プロセスはある意味これからの仕事人生では二度と得られないような長期休暇でもあり、勉強だけではなく、新たな国や出会いを求め、視野を広げて、気持ちを豊かにすることは、最終的にパフォーマンスの質を高める上でも貴重な財産になると思います。もしTuckに来られるのでしたら、勉強に徹すると共に、このようにGlobal Experienceを得る活動を挟まれることをお勧めします(ちなみに、今回私はExchange Programを利用しましたが、その他Tuckには短期で海外経験を得ることができるLearning ExpeditionTuck Global Consultancyといったプログラムがありますので、そちらも参照下さい)。
L.N.(T’14)