2013年9月6日金曜日

Walmart Summer Internship

今月上旬でアメリカのアーカンソー州にあるWalmart 本社でのサマーインターンがようやく終ったので、そこでの経験について述べたいと思います。

Walmartでのプロジェクト
インターンは合計2ヶ月実施し、Walmartがビジネスを展開する11カ国(アメリカ、カナダ、メキシコ、チリ、アルゼンチン、ブラジル、日本、中国、インド、イギリス、南アフリカ共和国)の決済ビジネスの市場レポートを、各国の現地支社とのパイプ役となって作成するプロジェクトを任されました。
一番大変だったのは、異なる特徴を持つ各国とうまくコミュニケーションを取って情報を入手するプロセスと、吸い上げた情報をどのように統一した基準とフォーマットで取り纏め、各国の特徴を透明化していくかというところでした。個人的には日本、海外含めてそれなりにこの業界における知識を備えていた自信があったのですが、それでも色々と苦労しました。例えば、何故この国は先進国なのに現金払いが多いのか、何故この国には他の国に当たり前のように存在する支払手段が受け入れられていないのかといったギャップを理解したり、現地のFinancial teamとのやりとりでは、「本社はうるさい」とサポートを得にくい傾向をうまくコミュニケーションを駆使して情報を入手したりする必要がありました。さらに、各国の時差や各社の内部事情(この国は情報を元々持っていない、この国は情報はあるが内部プロセスが時間かかるなど)等をうまく調整し、最終的に幹部へのプレゼンテーションを実施してプロジェクトを貫徹させました。

Tuck1年間を通じて得たスキルを活用できる場面も多々ありました。

一点目はチームワーク。Walmartは大企業ながら組織間の壁があまりなく、水平連携がかなり頻繁に行われています。逆に言うと、水平連携をドライブできることがマネジメントとして必須のスキルといわれており、社内では人脈の広さや、連携力を有していることがインターン生を含めて評価の重要事項の一つになっていました。Tuckで数多くの授業によって提供されたグループワークを通じてのチームメンバー間の連携手法や、ソーシャルイベントでの人脈構築の経験は、インターン中も非常に役立ったと感じています。

二点目は経営層向けコミュニケーションスキル。最終的なプレゼンテーションでは、如何に2ヶ月で集めた11カ国の非常に複雑かつ詳細な情報を分かりやすく明確なストーリーに落としていくかという事が求められ、Managerial Communicationという授業 で訓練したプレゼンテーションの手法がかなり役立ちました。

三点目はプロジェクトマネジメントスキル。2ヶ月という期間で与えられたプロジェクトに対して明確な回答を持っている人は誰もおらず、どのように情報を取るか、どのような段取りでプロジェクトを終らせるかといった事は全て自分で決めていく必要があったり、状況次第ではプロジェクトスコープの変更を上司と交渉する必要も生じ、First Year Projectでチームリーダーとして経験したプロジェクトマネジメント力がかなり活かせたと感じています。その他全般として、エクセルやパワーポイント等のビジネスツールの利用頻度がかなり多かったのですが、Decision ScienceConsulting Project Managementなどの授業を通じて得たエクセルやパワーポイントのスキルがかなり役立ちました。

非常に大変でしたが、達成感を得たと同時に、日本人であってもWalmartというアメリカを象徴する世界最大の小売企業においても何とか戦えるんだなという自信を得ることができたのは非常に大きな収穫です。

WalmartでのTakeaway
自分の成長を感じる以外にも、世界有数のグローバル企業の本社で働けたことで貴重な学びが得られました。

一つ目はopen space technology (議題等を綿密に組まず、リラックスした環境で社員の団結力を促進する手法)の駆使。インターン初日にいきなりShareholder’s Meetingというキックオフイベントがあり、世界中の従業員が一斉にアーカンソーに集合し、トム・クルーズ、ヒュー・ジャックマン、エルトン・ジョン、ジェニファー・ハドソン等の超有名人をゲストに迎えて、一年の総決算の発表、翌年の戦略の発表、そしてライブパフォーマンスが行われました。また、毎月第一土曜日はSaturday Morning Meeting というイベントがあり、私が参加した回ではトムクルーズ、今アメリカで非常に人気があるといわれるDuck Dynastyのメンバー、そしてIBMCEOバージニア・ロメティー等が登場し、それぞれの立場から語られる人生観やリーダーシップ論等を非常にエンターテイメントに富んだ雰囲気の中で学ぶ機会を得ました。堅ぐるしさのないオープンな環境で従業員の参加を促し、連携力やビジネスノウハウを養成する仕組みを体感したのは初めてでした。

また、その反面、従業員を厳格に評価するプロセスや、業績連動型のボーナス制度等で結果はしっかり出すことを求められるシビアな部分も並存しており、Walmartはオープンと成果主義をうまく両立させた、日本では稀に見る組織体を構成することで、長期的成長を実現しているのだろうと感じました。

  
もう一つは従業員に根付いた企業理念。WalmartSam Waltonが立ち上げた世界最大の小売企業ですが、非常に驚いたことに、企業理念である「EDLP (Everyday Low Price)を実現することで世界中の人々の生活負担を軽くし、生活を豊かにする」は全く変わっていません。他企業だと、経営層が変わるタイミングで企業理念は変更されることが多々あり、従業員によっては企業理念をしっかり把握していないということもありますが、Walmartにおいては経営層からカート押しの従業員まで、このシンプルな企業理念は完全に浸透しており、誰もがこの理念に基づいて日々の仕事に専念しています。例えば、WalmartにはWalmart Cheers という掛け声(団体スポーツ等で円陣を組んで掛け声を言い合うようなもの)があり、開店のタイミングや会議の始め等で頻繁にWalmart Cheersがされています。この掛け声の中にも、上記企業理念がうまく溶け込んでおり、常にその理念を忘れないような工夫がされています。最初はWalmart Cheersをするのはかなり抵抗感があったのですが、実際自分のチームやMBAや学部生インターン生300人を相手にWalmart Cheersをリードした際に、言葉が皆の気持ちを繋いでいく感覚を覚えてからは、非常に良い仕組みだと感じるようになりました。企業理念の共通認識が上記でも触れた一体感の醸成を促し、会社を大きくしていく原動力となっているのだと感じています。

Tuckの一年目のコア科目を通じて、ファイナンス、アカウンティングなど、マネージャーとして知っておくべき各ビジネス領域における重要なコンセプトやツールを学ぶことに注力し、いままでの職場経験では得がたかった多様な知識を効率的かつ効果的に獲得することができましたが、インターンでの経験を通じて、真の意味で会社の事業の長期的成長をドライブしていくためには、さらに踏み込んだ能力の養成が必要だと感じています。例えば、従業員に企業文化を浸透させられるようなコミュニションスキルの獲得や、従業員自らその企業文化を纏って自ずと事業拡大を行っていけるような仕組みづくりの手法といったものが重要だと考えており、Tuckでの残り一年間でそのヒントとなりそうな授業やプロジェクトに積極的に関わっていこうと思います。

L.N.(T’14)