[クラス構成]
一学年278名が4つのsection(各70名程度)に分かれていて、授業はsection毎に受講。また各sectionは更に12のstudy group(各5-6名)に分かれていて、日々の学習はstudy group毎で行う。チームワークを重視するTuckでは、study group形式を採用し、課題などもstudy group毎で提出(当然成績もstudy group毎に評価)。従って授業後は毎日study groupで集まり、一緒に宿題を解いたり、一緒に授業の予習を行ったりする。例えば金融業界への転職を考えている学生の場合、ビジネススクールでの成績も重要になってくるが、Tuckではstudy groupメンバーによって少なからず成績が左右される面もある。従ってどういうメンバーと一緒になるのか、その中で自分はどのようにstudy groupに貢献するのか、これらを意識しながら学習密度を高めるべく努めることになる。尚、study group内の構成は平均すると(6人中)男女比4:2、アメリカ人対インターナショナル比4:2であり、職種のバックグランドも可能な限り多様となるよう意識された上で組まれている。Fall A・Fall B期間中は同一section、同一study groupメンバーと学習を行う(Fall B後にシャッフル)。Study groupは最も多くの時間を一緒に過ごす仲間となる。
[Fall A概要]
Fall Aでは、4週間という時間の中でケースメソッドという学習スタイルに慣れると共に、統計学・ミクロ経済学の学習を通じた基礎的な計数感覚を身に付けるのが主目的。ほとんどの学生が後述する4つの必修授業を受けることになる(学部時代の専攻を勘案し、STATSやMANECの学習は不要と自身で判断する場合は、事前に学校側に申請し、替わりにelective授業を受講することが可能)。
[Statistics for Managers (STATS)]
Kopalle・Neslin両professorが担当。私のsectionはNeslinが担当。内容は統計学入門。12回の講義で一気に回帰分析までをカバーし、SPSSの基本的操作も習得。今後の科目でも活用していく事になるツールの習得が主な目的のため、基本的には座学なるも、Tuckの名物professor Neslinがミニケースなどを織り交ぜながら座学をただの座学で終わらせない魅力的な授業。授業中、学生はある程度積極的に発言することも求められるが、(教授が特定の学生を一方的に指名する)cold callは行われず、class participationは成績の10%に留まる。用いられる具体例を通じて、統計学の各ツールが実際のビジネスのどのような場面で役に立つのかを実感することが出来る。Neslinの説明の面白さ、丁寧さによるところが大きいと思料するが、多くの学生は授業を楽しみながら、確実に理解も深めていっている印象。
[Managerial Economics (MANEC)]
Fort・Hall両professorが担当。私のsectionはFortが担当。12回の講義でミクロ経済学を広く浅く学ぶ授業で、競争市場・独占市場に於けるコスト分析・価格決定メカニズムなどを学習。座学が中心となるも、座学で学んだツールを活用すべくケースも複数用いられ、スタディグループでのケースの分析を通じて出した結論をプレゼンテーションする場も2回設けられた。Class participationは成績の10%で、(授業の冒頭にその日発言を求められる学生が発表される)warm callが実施される。途中からは計算問題が多くなるが、コンセプトを考えてあげながら問題を問いていくのは(個人的には)楽しい作業であった。また私自身、元々資源プロジェクト管理に携わっていた為、固定コスト・変動コストの位置付けを考えてあげる作業には懐かしさも覚えた。
[Analysis for General Managers (AGM)]
Argenti・Finkelstein両professorが担当。Argenti・Finkelsteinは共にTuckの名物professorであるが、私のsectionを担当したのは、日本でも有名な『名経営者が、なぜ失敗するのか?』の著者であるFinkelstein。6回の講義、5つのケースを通じてマネジメントに必要な様々なフレームワークに就いて学習する。SWOT分析(問題点の洗い出し)・2x2 method(問題点の整理)・WHO? / WHAT? / HOW? (戦略の検証)から始まり、STAR model(組織の検証)・Four Cornerstone Roles of Leaders(リーダーの評価)等。これまでフレームワークというものに対して『理屈は分かるが、どこまで実態を反映出来るのか?』と少なからず疑問を持っていたが、実際に使ってみると『まずは(ある程度は無理矢理)フレームワークに収め込むことで、客観性を持たせる』為のプロセスであることが理解出来て大変参考になった。Class
participationが成績の50%を占めるが、コースの最後の方はprofessorが配慮して、それまで充分に発言出来ていない学生を積極的に当ててくれる。Cold callあり。
[Leading Individuals & Teams (LDIT)]
Kleinbaum professorが全4sectionを担当。8回の講義、8つのケースを通じてリーダーシップに就いて学習する。コースはLeading
Individuals・Leading
Teams・Managing
Your Careerと3部構成になっている。AGM同様、典型的なケースメソッド形式の授業であり、class participationは授業の40-60%を占める。またこれもAGM同様、授業中の発言が少ないと、コースの後半で多く当ててもらえる。Cold callあり。『組織の中でどのように周りの人間をモチベートするのか?』、『考え方の合わない上司とどのように仕事を進めるのか?』、『チームとして最大限の力を発揮するには堂すれば良いのか?』など、正解のない問い掛けに対して、様々な具体例を用いながら、最適な判断を追及していくという内容。Kleinbaumはテンポ良く、クラスを上手くコントロールしていくので、(しっかりとケースを読み込んで準備していれば)自分も積極的に発言しながら気持ち良くKleinbaumショーを楽しむことが出来る。Kleinbaumは『1回の授業で何かを得るというよりは、大きな流れの中で物事に対する正しいアプローチを身に付けてほしい』と言いながらも、毎回の授業でtakeawaysを丁寧に整理してくれる。従ってこちらも大変頭が整理された状態で種々コンセプトを吸収することが出来る。
[所感]
先に述べた通り、AGM・LDITは授業中に充分に発言出来ていない学生は、コースの後半では積極的に当ててもらえる。またSTATS・MANECは中間試験と期末試験の前には必ず補習講座(自由参加)を開講する。更に全てのprofessorが 、学生が自由にprofessorに対して質問をすることが出来るoffice hourを設けている。このように木目細かい対応から、日本の大学に見られるような『賢い人だけ良い成績を取って下さい』というような放任スタイルではなく、『全ての学生にきちんと授業内容を理解して欲しいんだ!』というTuck側の強い思いが感じられた。このようなサポーティブな環境の中で、大量のケースや宿題に追われながら、study groupの仲間と切磋琢磨し、密度の濃い時間を過ごすことの出来たFall Aであった。
よしかん (T’15)