2020年12月19日土曜日

Fall termの選択授業

 2年生のIchiroです。

 先日はWebinarにご出席いただきありがとうございました。Fall Termには6つの選択科目を取りましたので、Webinarの補足的な意味も込めて簡単に紹介します。


The Arrhythmia of Finance

 ファイナンスはどうして間違いを起こすのか、ファイナンスの常識は妥当なのか、「定性的に」考えてみようという授業です。「定性的に」というところがポイントで、数字はあまり出てこず、論理学や心理学に近い授業となっています。説明が難しすぎるので、いくつかのトピックを箇条書きします。

・「リスク」という言葉が曖昧過ぎて意思決定に悪影響を与えている件について、徹底的に分析

・あなたの自家用車や、博物館建設のために受け取った補助金は、本当に「資産」なのか。

・トレーダーの体内ではどんなホルモンや信号が行き交って意思決定にどう影響しているか

・後知恵バイアスや選択的注意などの、人を自信過剰にする落とし穴

 この授業はoutside-the-box的な視点が多数身に着く素晴らしい授業なのですが、唯一の難点は、反吐が出るほどのリーディングの量です。ごめんなさい。日本語訳版を適宜使いました(ケインズ原典とか無理でしょ・・・)


Leadership in the Global Economy

 DeanのMattの授業です。貿易戦争、気候変動、黒人奴隷制度への補償問題、格差の拡大というテーマに対して、5人の生徒がそれぞれ自分が選んだリーダーの視点から、5分間の議会証言をした後に、Dean, ゲスト(毎回、そのトピックの大物論客が登場しました)、他の学生(=国会議員という設定です)からの質問攻めに合うという授業です。

 たとえば気候変動がテーマの際には、石炭業界の重鎮、太陽光パネルメーカーのCEO、インドの偉い人等の立場から、議会証言をしました。石炭業界の重鎮は、「石炭は特に途上国では絶対に必要なエネルギー源。雇用も生み出している。規制強化反対」と証言するわけです。太陽光パネルメーカーは「気候変動に真剣に取り組め。エネルギー構造の転換が必要だ」と。インドの方は「途上国は気候変動に取り組めない。アメリカが頑張れ」とやります。

 これに対して、国会議員から「化石燃料産業をいじめると、私の地元の雇用が壊滅するんですけど」とか答えにくい質問がされて、リーダー達は時にはキッパリと、時には意識的にムニャムニャと回答する練習を積むわけです。

 このギミックにより、知識の習得に加えて、このムニャムニャ答弁する能力や、個人としての思想と組織代表としての意見のせめぎ合いの中で発言する能力を養うことができるわけです。


Countries & Companies in International Economies

 コアのGlobal Economics for Managersの発展版で、皆大好きAndrew Bernardが教鞭を取ります。主にケースを使って、為替リスクに対して、企業が取るべき戦略を緻密に分析します。またティファニーの日本法人の垂直統合の理論的メリットの分析や、米国に輸入される家電製品への関税がもたらしたことなど・・・。経済学の理論を、現実のケースに対して明確に結びつけることにおいて、Andrewの右に出る者はいないんじゃないかと思います。Tuckに入学されましたら、必ず履修して味わってください(笑)。


Managing Stakeholder Issues in Private Equity

 カーライル重役であったDavid Marchickの授業です。タイトルのとおり、PEファームが、Limited Partners、被買収企業の役員や従業員、政府、コミュニティといったステークホルダーにどう対応していくのかにフォーカスした授業で、数字は扱いません。被買収企業が清算された時、(法的根拠のない)一時金を従業員に払うべきかとか、リターンが高い民間刑務所への投資等、controversialな案件について、議論を深堀りします。また、David自身が中心で携わってマスコミに大々的に称賛された数年後に、手のひらを返したように扱き下ろされたケースなども扱います。Zoom環境下で授業は通常録画されておりますが、彼は頻繁に録画を止めて色々教えてくれます(笑)。


Venture Capital and Private Equity Basics

 生徒からの過去のEvaluationはイマイチだったのですが、個人的には学びの多い授業でした。Basicsという通り、VCPEの基礎を学べる授業です。私はファイナンスバックグラウンドでありながら、VCPEに携わったことがなかったので、様々な株式の特性、契約書、バリュエーション、キャッシュウォーターフォール、SaaSモデルの分析などなど、非常に効率よく学べたなと思います。レクチャーとケースが交互に行われるので、ステップバイステップで知識が定着していくのをよく感じられました。VCPEの経験がある方には物足りない授業かもしれません。


The CEO Experience

 元NH州知事のJohn Lynchの授業。全てケースで、リーダーはどうあるべきかに焦点を絞ってディスカッションをします。リーダーは一般企業、NPO、行政と様々、そして1960年代から現在に至るまでの本当に幅広いケースを取り扱います。授業からのTakeawayはたくさんあるのですが、John Lynchのリード無しでは陳腐になってしまうので、ここには書きません。ただ、言えることは、リーダーとして求められることはすごくシンプルであり、それはいつの時代にも変わらないということです。


 どの教授も、素晴らしい職歴&教育熱を両方持ち合わせているので、品質の高い授業が提供されているんだと思います。これまで累計8科目の選択授業を取ってきましたが、全て本当に満足度が高いです。「全て」だと嘘っぽく聞こえてしまいそうなので、つまらない授業に出会いましたら喜んでこちらで報告したいと思います(笑)。ではまた。