ビジターの方にTuckにおけるソーシャル・ビジネスやNon Profit Managementなどについて聞かれることもありましたので、今回はElectiveで開講されているEntrepreneurship
in Social Sector(ESS)という授業について書いてみたいと思います。(1年生の冬学期は2つのミニコース以外は選択授業はないのですが、事前申請によってコア授業の免除が認められれば選択授業を取ることが可能です。同授業は私を含めて3人の1年生が履修していました。また、履修はしなくても、興味のある授業を聴講している友人もいます。)
日本でも「ソーシャルビジネス」「企業の社会的責任(CSR)」「社会的責任投資」「Base
of Pyramid」など企業活動を通じて社会問題を解決しようとする取り組みへの注目が高まっているようですが、アメリカでも同様に(またはそれ以上に)、経済的な利益だけでなく、社会的な便益に興味を持つ学生が増えています。そのような流れを受けて、Tuckでもビジネスと社会貢献、あるいは、非営利組織のマネジメントに関する授業がいくつか開講されています。
そのうちのひとつがESSです。学期の半分で終了するミニコースとして開講されており、講義主体の前半(ESS1)と、実際のプロジェクトを実施する後半(ESS2)と、分けて履修することが可能です。私は両方とも履修しており、2月初めでESS1が終わって、今はESS2でコンサルティング・プロジェクトを実施し、昨日、無事にクライアントへのプレゼンテーションを終わりました。
私は元々ESS2に興味があり、ESS1はESS2受講の上で必須だった、というのが主な受講理由だったのですが、ESS1もよい意味で期待を大きく裏切る、非常に面白くて内容の濃い授業でした。
私は元々ESS2に興味があり、ESS1はESS2受講の上で必須だった、というのが主な受講理由だったのですが、ESS1もよい意味で期待を大きく裏切る、非常に面白くて内容の濃い授業でした。
授業は主にケース形式で行われます。ケースはさまざまなトピックをカバーしており、たとえば非営利団体に対する投資案件の選定、大企業の貧困層向けビジネス、NPOのターンアラウンドと本当に多岐にわたります。分野としても、アートや児童福祉、人権、ヘルスケア、貧困問題と、さまざまな分野が扱われるように工夫されています。たとえば、貧困層向けビジネスについては、どのように利益を上げるか、ということだけでなく、「貧困層を搾取している」という批判にどう対処するのがいいか、など、とても実践的な内容でした。
何よりこのクラスで最も印象的だったのはビジターです。ほぼ全ての授業にゲストビジターが来るのです。
といっても、ビジターが頻繁に来る授業自体は珍しいものではありません。この授業の素晴らしいところは、ケースで扱われている団体から、実際にビジターが来る、という点です。
といっても、ビジターが頻繁に来る授業自体は珍しいものではありません。この授業の素晴らしいところは、ケースで扱われている団体から、実際にビジターが来る、という点です。
ケースでの問題点に対して、実際にどのように対処したのか/するべきだったのか、生の声を聞くのはとても説得力がありました。
また、殆どのビジターとはランチや個別ミーティングのチャンスも設けられており(こちらは授業を履修していなくても申し込めます。Tuckには毎日のようにビジターが来ますが、場所柄、多くの人がHanoverに宿泊しますので、ビジターとランチやディナー、朝食を一緒に取る機会に恵まれています)、NPOで何十年もキャリアを積んでいる人から、ボストンコンサルティングのパートナーを経てNPOに転職した人まで、様々なバックグラウンドの方に直接、自分の疑問や意見をぶつけることができたのも、勉強になりました。たとえば、新しいNPOを設立したときに、ファンドレイズのために、どのように自分のビジネスキャリアを活用したか、組織運営においてNPOと営利企業で働く人のマインドセットの違いを理解することの重要性など、実体験に基づくお話はとても面白かったです。
ESS2ではケースでも扱われたSt. Jude's Ranch for Childrenという児童の保護・養護に関するNPOをクライアントとして、メディア戦略に関するプロジェクトを実施しています。期間が短いのでかなりスコープは絞られるものの、授業の担当教授以外にも、ブランドマーケティングやKotlerと共著によるマーケティングの教科書で有名なKeller教授などに協力してもらい、ESS1とはまた違ったチャレンジを楽しんでいます。(ESS2についてはまた別途、ご紹介します。)
もちろん、授業以外にもビジネススキルを活用した社会的なインパクトやNon Profitに関する経験や学びを得る機会はたくさんあるので、また別の機会に少しずつご紹介していければと思います。
(TG )