2013年12月15日日曜日

Independent Study – 日本企業の人材の国際化について

そもそもIndependent Studyとは...
今回は私が夏休みの間に取り組んだIndependent Studyについてご紹介したいと思います。Tuckでは基礎科目、選択科目以外に単位を取得できる選択肢の一つとしてIndependent Study (以下、I/S)があります。これは生徒個人が興味のある分野に関するテーマを設定し、二人の教授の監督の下、一学期を費やしてそのテーマの研究を行うものです。MBAの趣旨に沿ったテーマであること、一単位分の授業に相当する作業量を要すること、既存の授業と内容が被らないことなどいくつかの基準はありますが、その基準さえ満たせばかなり自由なテーマ設定が可能です。同級生に聞いてみたところ以下のようなテーマでI/Sを行ったとのことで、かなり幅があることがお分かりいただけると思います。
  • ある米国企業と韓国企業のJV(製造業)の過去の戦略の検証及び今後の動向に関する考察
  • 米国在住のラテンアメリカンの消費動向の調査
  • エンジニアリングスクールと協働して開発中のパワーエレクトロニクス技術のフィージビリティスタディ
  • 不動産開発事業のフィージビリティスタディ及びビジネスプランの策定
  • 起業を目指す複数の学生チームによる「リーン・スタートアップ」と呼ばれる必要最小限のプロダクトによる仮説検証を繰り返す起業方法の実践(来学期開始)

自分が選んだテーマをその分野を専門とする教授と共により深堀りできることや教授とより近い距離で意見をやり取りしたり、フィードバックを受けたりできることなどがI/Sの利点だと個人的には感じました。TuckGeneral Management Schoolを自任しているため、基本的にはGeneral Managerとして適切な判断を下す上で必要な視点や道具を身につけることが授業やプログラム全体の主たる目的ですが、特定の分野に関してもっと突っ込んで知りたい、専門の教授と強い人脈を作りたいという要望に対してI/Sは上手く通常授業を補完するような位置づけになっているのではないかと思います。

私の場合...

私個人が行ったI/Sに話を移しますと、私の場合社費派遣の規定上インターンを行うことが出来なかったため、その代替案として若干変則的ではありますが、夏休みの間I/Sに取り組むことに決めました(単位は翌秋学期扱い)。一年目の春学期にManaging Talentという 新しい授業が開講され、元々専門ではないものの興味があった人事の色々な側面(採用、評価、動機付けetc.)に関して学ぶ機会があり、もう少し深く突っ込んで考えてみたいと思い、その担当教授に監督をお願いすることとなりました。話し合いを重ねた結果、いくつかの候補の中から結局「日本企業が今後競争力を確保していくためにいかに人材の国際化を行うべきか」というかなり壮大な(?)テーマ設定に落ち着きました。きっかけとしてはアジアを含む様々な国の企業がキャンパスに来て積極的に自国出身者以外の人材の採用活動を行って競争力を確保しようとしている一方で、その中に日系企業を見かけることは殆どなく、この状況に問題はないのだろうか、MBAに限らず海外の人材が日系企業を選び、そこで上手く働いて成果を出すには何が必要なのだろうか、ベストプラクティスはあるのだろうか、と考えたのが始まりです。

直接関係ありませんが、夏のハノーバーです。緑が非常に眩しいです。

成果物をより実践的な内容とするために、派遣下の企業からの依頼を受けたコンサルティングプロジェクトという形で本研究に取り組むこととしました。他のI/Sのケースでは実際にクライアント企業の要望に対して成果物を出すという場合もあったようです。作業の流れとしては、まず教授と全体スケジュールを合意し、Tuckの学生全員がアクセスを与えられているデータベースから関連する論文、書籍、記事を見つけてそれらを読み漁り問題設定を明確にした上で、その後参考となる企業に対してインタビューを実施したり、アンケートを回収したりすることで国際化を行うことによるメリット、デメリット、行う上で障害となる点やその解決策などを纏めていくこととなりました。

最終成果物(パワーポイント)のカバーページです。

詳細について全て触れていると長くなってしまいますので、重要なポイントだけ述べますと、インタビューの中で外国人の従業員は日系企業で働くにあたってやはり日本人でないと裁量が小さく昇進やスキルアップの機会が限定的である(Lack of Career Opportunity)ことが最も大きな問題点であると繰り返し指摘していました。逆に、例え言語や文化(長時間労働、意思決定プロセスの違い、コミュニケーション方法の違い)で大きな適応を強いられても十分な機会が与えられている企業ではそれらの点はそこまで気にならず、むしろ異文化を経験して自分の引き出しを増やすことが出来るので前向きに捉えている、というコメントも別のインタビューでは何度かあり非常に興味深く感じました(残念ながらこのケースは非日系企業の方が多かったです)。日系企業の現状としては、多くの場合、社長、重役レベルの人材を外部から招聘したり、新卒採用において一定数海外からの人材を採用したりするに留まり、組織の極端に上や下だけで国際化の試みがなされている状況です。国際化が組織全体に浸透していない場合は、結局海外から採用した人材も日本化(=郷に入っては郷に従えの精神で極力日本人と同じように振舞うことに専念する)してしまい、わざわざ日本人以外の人材を採用した意味がなくなってしまうケースも見受けられました。

又、そもそも人材の国際化による多様性の確保がどれだけ企業の競争力に繋がるのかという点についても、便益が明確なケースとそうでないケースがあり、一概にメリットがあるとは言えないのも事実です。ただ、厚生労働省発表の推移予測によれば、向こう50年で30%以上(さらに言えば労働人口にあたる15歳-64歳に至っては45%以上)人口が減少する見込みである日本において、経済や財政を今のレベルで保つための数を確保する観点から海外からの人材の確保は避けては通れない問題なのではないか、と考えています。


授業でもこの難題の先頭にいる日本はどのように対処するのか?という質問が取り上げられています。

話をI/S全般のことに戻しますと、以前の1年目を振り返るポストでも触れましたように、自主的にやりたいことを追求して自分にとってMBAの価値を最大化する上でI/Sは一つの有効な手段だと思います。企業派遣という立場がネックになってなかなかインタビューを受けてもらえなかったり、受けてもらっても表面的な回答ばかりであまり本音を聞けないのでは、と懸念していたものの、教授が紹介してくれた企業やTuckの卒業生のネットワークを通じて現場の生の声を数多く聞くことができ、非常に参考になりました。Tuckという学校の信用力の高さやアラムナイネットワークの強さを実感する良い機会となりました。Tuckで学ぶ際にはぜひ一度 I/Sの検討をされることをお勧めします。

最後にこれから1月頭のアプリケーション締め切りに向けて作業が追い込みに入っていく方も多いと思いますが、寒さや疲れに負けず最後まで走りきれるよう遠くハノーバーに地より応援しております。私自身が2年前同じようにアプリケーションを準備していた時のことは今でも昨日のことのように思い出せます。あの時は忘年会に繰り出す同僚、友人たちを見ながら何で自分はわざわざこんな大変な思いをしてるのだろう、と幾度なく思いましたがその努力に見合うどころか、おつりが来るくらいの経験をこちらに来てから出来ているとしみじみ感じています。ご自分のそういった姿をイメージしながらこの大変な時期を乗り越えていただければと思います。すでにアプリケーションを提出された方はお疲れ様でした。インタビューなど次のステップあるかもしれませんが、もう一踏ん張り頑張って下さい!

何か在校生がお手伝いできることあれば遠慮なくご連絡下さい。我々も可能な限り全力でサポートします。

S.Y (T'14)