2013年12月23日月曜日

How classes intersect with career interests - 期待以上に役立っている授業経験 -

授業とキャリア

あっという間に2年目のFall Termも終わり、MBA生活も残すことあと半年になってしまいました。既に業務経験が7年あったのと、元々勉強嫌いな私はMBAの授業に対してあまり高い期待を持っていなかったのですが、これまでを振り返ってみると、想像していた以上に授業が自分の卒業後の志望キャリアへのステップとして役立っていることを実感する場面が多かったので、その点に関して焦点を当てて書きたいと思います。時期としては、Spring Term (1st Yr)Summer InternFall Term (2nd Yr)Winter Term (2nd Yr)に絞ります。

私のキャリア目標

まず、私の卒業後のキャリアとして希望している領域ですが、時期によって優先順位が入れ替わっていますが主に下記の3つです。

・アメリカ/日本のテック系企業(一部の大手、スタートアップ)
・起業
・ベンチャー・キャピタル(以降VC

TuckGeneral Managementで知られている学校なので、決してこの分野に興味がある人に対してTuckがベストな学校だと主張する気はありませんが、Tuckではやや少数派のキャリア志望(とはいえ2013年卒業生の13%がテック業界に進んでいます)の人にとっても、きちんと有用な授業を提供しているという事を伝えたいと思います。(参考までに最終的にTuckを選んだプロセスについてはこちら

Spring Term (1st Year)

今年から少し変更がありましたが、私の1年目のSpring Termの授業構成は下記の通りです。Electiveに関しては卒業後のキャリアとしてプライベート・エクイティ(以降PE)、VC、スタートアップのいずれも検討していたので、それぞれに関わる授業を履修しました。

Core(必修)授業
Operation Management
  •  オペレーションの重要なコンセプトと分析方法に関する授業でした。生産工程におけるボトルネックの特定や効率化の手段などを、チームを組んでのシミュレーションゲーム等を通じて定量的に分析して意思決定することを学びました。
Management Communications
  • 分かりやすいパワーポイント資料の作成とそのプレゼンテーションを鍛える実践的授業です。毎週課題が課され、少人数のグループの前でプレゼンテーションを行い、お互いにフィードバックをしてプレゼンスキルを磨きました。自分のプレゼンは毎回録画され、後で見てはがっかりするという感じでした・・・。
First Year Project
  • 5,6人のグループである企業に対するコンサルティングプロジェクトを行うか、起業を目指して自分達のビジネスプランを磨きます。FYPに関する概要はこちら。私は前の投稿で触れたプロジェクトをやることにしました。コモディティに近いナッツという商品のマーケティングを通じて、自分が殆ど馴染みのない業界で、馴染みのないスキルを身につけたいという考えで選びました。また、クライアントは農家ではなくナッツ農場を買収した投資家で、新しくビジネスを立ち上げるかのようにゼロベースで戦略を考えてほしいとのことだったので、面白い経験でした。

Elective(選択)授業
Entrepreneurial Finance
  • スタートアップの資金調達に関するファイナンス系の授業です。投資家側、起業家側、双方にとって役立つように設計されています。講義、ケース、ゲストスピーカーがほぼ均等に行われ、講義ではタームシートと呼ばれる一般的な資金調達の契約書に含まれる条項の内容や、その数字面でのインパクトの分析手法を学びました。ケースでは比較的直近のスタートアップを題材にしたものが選ばれ、投資家側と起業家側双方の思惑、創業者同士の最初の株式の分配、スタートアップのビジネスの評価などについて議論を交わしました。ゲストスピーカーはTuckの卒業生でシリコンバレーで活躍するテック系の起業家、大手ベンチャー・キャピタルの投資家などが呼ばれ、特定のテーマに沿って講義をする場合もあれば、自分達の実際の投資案件や経営中の企業を題材にディスカッションをする事もあり、授業後には個別に話してネットワーキングする機会にも恵まれました。
Leading Entrepreneurial Organizations
  • 3部構成になっており、1部ではスタートアップの起業時の分析、2部では創業する場所が企業の発展にどういう影響を及ぼすかを分析、そして3部ではいくつかのグループに別れて特定の領域におけるスタートアップの動向について、これまで学んだ組織に関連したフレームワークを用いて分析を行いました。授業の名の通りビジネス面よりも、組織面に重点を置いた内容でした。例えばテック系スタートアップ等のビジネスケースを通じ実際に起業に踏み切る局面でどのように共同創業者や初期従業員を募集し、どういう事を考えて採用するかについての分析や、有望なスタートアップが失敗した原因を創業者の内面から分析しました。また、5人の連続起業家やスタートアップでの勤務経験者などを呼んで、それぞれの人がどういう事を考えて起業至ったか、またどういう風にしてリスクを軽減したかなどについて話してくれるセッションもありました。まさに私は起業するかどうか、するとしてもどのタイミングでするかなどについて悩んでいた事もあり、非常にタイムリーな授業でした。
Structuring Merger & Acquisitions
  • 様々な方法(株式交換、現金による買収、条件付買収など)で発表あるいは執行されたM&Aのケースをもとに、限られた情報で適正なバリュエーションは何かについて議論する授業です。それを通じて、どのようなケースにおいてどういう仕組みのM&Aが望ましいのかということを、経営者として判断できるようにする事が目的です。既にCorporate Financeについてある程度の知識がある事が前提となっており、毎回自分で簡単なモデルを作成して分析をしてから授業に出ることが求められましたが、細かい数字分析よりも、そのM&Aがどういう意味を持ち、企業や投資家に対してどのようなインパクトがあるのかを理解する事により重点が置かれていました。

     
FYPで訪れたAustinにある広大な農場。夕飯のBBQの前にチームメートとクライアントとサッカー。


Summer Intern

夏にはサンフランシスコにあるVC3ヶ月インターンをさせて頂きました。主にサンフランシスコ/シリコンバレーのスタートアップに対して、初期段階(業界ではアーリーステージ企業と呼ばれ、資金調達のラウンドとしてはシード、シリーズAと呼ばれている段階)での投資をしている会社でした。私はテック業界での業務経験は渡米前に日本でやらせて頂いた1ヶ月のインターンしかなく、知識・経験が浅いので、事前に業界関連の本やニュース、ブログを読み漁りましたが、それ以外にもTuckで学んだ事も役に立ちました。私が任せて頂いた業務の中で、新規投資先候補企業の分析があったのですが、Entrepreneurial Financeで学んだいくつかのフレームワークや、授業で扱ったケースを自分で分析した時に見落としていたコンセプトが頭に残っていたので、社内の他のメンバーに対して自分の見解を述べる際に有用でした。また、インターン中に自分が担当した1社に対して実際に投資を実行することが決まり、同授業で学んだタームシート(投資契約書)を実際に精査する機会に恵まれました。一方で、やはりどんどん出てくる画期的なアイデアを持ったスタートアップのビジネスを評価するにあたって苦労する事も多く、その経験が次のFall Termでの授業の学びを濃くしてくれました。

サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジ

Fall Term (2nd Year)

Spring TermElectiveを選んだ時はまだバイアウト系のPEも卒業後のキャリアとして考えていたのですが、夏のインターンを通じてVCを含めた広義のテック業界で働き、いずれ起業したいという気持ちが強まったため、それに基づいた授業選択をしました。

Entrepreneurship and Innovation Strategy
  • これはこれまでで自分の人生で一番面白く、Eye-openingな授業でした。教授のRon AdnerThinkers50という世界のManagement ThinkersのランキングでOn the RadarというTop 50の次点的な表彰を得ており、注目され始めています。授業の内容は、イノベーションによって新しいビジネス機会が創出された場合に、仮に経営者が合理的、セオリー的に正しい意思決定をした場合でも、実はそれが原因でいずれ失敗する理由について迫る授業です。HBSの有名なChristensen教授の名著「イノベーションのジレンマ」と一部では重複した内容ですが、Adner教授はオリジナルの見解・分析を加えています。教授が、「イノベーションが成功するには多くの要因が揃わないといけないので、成功率を高めるのは難しい。しかし、失敗を事前に予想する能力を高めることで、失敗する確率(要因)を減らすことはできる」と言っていたのが印象的でした。一見矛盾しているように聞こえますが、これがこの授業の本質の一つです。この授業を夏の前に学んでいたら、スタートアップのビジネスを評価する際にかなり役立っただろうなと実感しながら勉強していたので、今でも授業内容が鮮明に頭に残っています。
Advanced Entrepreneurship
  • 1年目のWinter TermElectiveIntroduction to Entrepreneurshipという起業に向けたビジネスプランを作る授業があり、この授業はその続編のようなものです。授業の2/3はゲストスピーカーで、成功した起業家、失敗した起業家、ベンチャーキャピタリスト、起業関連業務に携わる弁護士、営業のプロ、大企業の事業買収担当者として成功している人等々、様々な異なる立場からの話を聞くことができました。授業外では個人又はチームで起業プロジェクトを手掛け、最後の授業では投資家、経営者、起業家などで構成されるゲスト審査員に対してビジネスのプレゼンをしました。私は実際に起業を目指しているクラスメートと組んで、コンセプト作り、潜在的パートナーや仕入先の開拓、市場調査、収支予測、会社設立などに関わりました。プレゼンではManagement Communicationsで学んだ事とインターン中にシリコンバレーで学んだ事を融合させて実践し、ビジネスモデルを練り上げる過程では、質の高いサービスを競合よりも低い価格で提供しつつ利益を確保するために、Operation Managementで学んだコンセプトを使って生産工程の効率化やボトルネックを検証しました。
Consumer Behavior
  • マーケティングの授業ですが、細かなテクニックよりも消費者心理学に焦点を充てた内容でした。消費者の心理を動かす主要な原理を理解し、どのような事を考えてブランディングやプロモーションを行うことで効果的に消費者に購入するという行動を導き出せるかということなどについて学びました。授業は講義・ケース・ゲストスピーカーの組合せで行われました。宿題では、ある状況において自分がChief Marketing Officerだったらどのようなマーケティング戦略を取るか、という事を書いて提出する事を何度か求められました。この授業で学んだ事は、上述のAdvanced Entrepreneurshipで関わっている起業プロジェクトのマーケティング戦略やロイヤリティプログラムなどの骨子を策定する際に役立ちました。
Law, Technology and Entrepreneurship
  • この授業はThayerというDartmouthのエンジニアリングスクールの授業なのですが、Tuckの学生にもオファーされており、Tuckでは受けれない法務に関する授業だったので履修しました。起業に関連した法律や契約に関する授業で、知的財産(特許、著作権、トレードマーク)、雇用契約、会社形態毎のメリット・デメリット、そして設立時の必要手続き及び契約書類などに関して学びました。いずれも実際に起業をする際には必須の知識で、先程の起業プロジェクトで実際に会社の設立手続きを今しているところなので、早速役立ちました。

·     

       グループワークのミーティングの際のホワイトボードのメモ


Winter Term (2nd Year)

来年1月から始まるWinter Termでは、下記の経験・考えを基に授業を選びました。
  • Fall Term (2nd Yr)でやはりTuckStrategy系の授業は質が高いと再認識
  • テック業界で働く場合や起業する場合においても、Strategicな考え方は重要であると考えている
  • 有名起業の成功要因を理解しておくことは就活のインタビューや業界の人と話す際に重要であるとインターン等を通じて実感した
  • インターン中に会ったスタートアップや自分が現在関わっている起業プロジェクトでの経験を通じて、次々と進化するテクノロジーを活用した顧客とのコミュニケーションは重要と感じた
  • マーケティングはビジネスの重要な要素であるが自分はあまり経験がない
実際に履修予定の授業は下記で、全て希望通りに取れました。ちなみに、Tuckの授業選択のいいところの一つとして、スモールスクールなので取りたい授業が取れない事が殆どないことがあります。来期の授業なので、手短に内容を説明します。

Deconstructing Apple (Research to Practice)
  • これは近年Tuckで始まったResearch to Practiceという履修人数を10数名に限定した少人数講義で、教授の専門分野の中から特定のテーマに絞ってより深く掘り下げて学び、生徒同士、生徒・教授間のディスカッションを蜜に行うことを意図しています。この授業ではアップルの設立時から今日までの成功と失敗に関して、専門家によるリサーチなども参考にしながら分析します。
Digital Marketing Strategy
  • テクノロジーの進化に伴い人々のメディアの消費行動が変化していく中で、多くのマーケティング戦略・理論は時代遅れになっているため、変わりゆく消費者行動に対応した、新しいメディアを活用したマーケティング戦略を構築する必要があるというのが主旨の授業です。
Innovation Execution
  • 組織の中でイノベーティブなビジネスアイデアが生まれた場合、革新的な組織改革をするプランがある場合に、それをどのように組織の中で実行していくか、どうやって組織を動かすかという、General Management的な授業です。
Strategic Principle of Internet Business
  • インターネット関連ビジネスにおいて重要な戦略的要素を学ぶ授業です。LinkedIn, Zynga, Yelp, Foursquare, Monster.com, Amazonといった最近の有名成功企業をケースで扱います。
Database Marketing
  • 名前の通り、データを分析してマーケティング関連の意思決定を行うための分析手法を学ぶ授業です。テクノロジーの進化に伴い膨大なデータを迅速に収集・分析できる時代なので、今後より重要性が高まる分野だと思います。         
このように、あくまで1つの事例ですが、どのようにしてキャリアの興味と授業が結びつき、役に立っているのかを少しイメージして頂けたなら幸いです。特に他業界への転職を考えている場合は、もちろん授業だけでは十分ではないので、空いている時間で別途努力をする必要はあります。Tuckでは、授業外でも、課外活動に参加しながら自分のしたい事をする時間を自分次第でつくりやすい環境にあると思います。


Y.I (T'14)