2012年11月18日日曜日

Trip to NY (PE Conference & Networking) - Part 1


先週ニューヨークで行われたYale MBA主催のPrivate Equity Conferencehttp://pe.som.yale.edu/2012/index.html)に出席するついでに4日間ニューヨークに滞在してきたので、その時の様子を書きたいと思います。
最初にこのConferenceに参加した背景を説明させて頂きます。私は日本で大学卒業後投資銀行業務1年、その後同じ会社で6年不動産投資業務(Private Equity Real Estate)に携わってきており、不動産関連資産(オフィスビルや住居、商業施設などの建物、ホテル事業(建物と運営会社)、上場会社や未上場会社株式、不良債権など)への投資を担当していました。Tuck卒業後はまだいくつかキャリアの道を考えていますが、その中の一つとして不動産にしばられない企業投資を行うPrivate Equityに興味があります。大きなくくりで言えばファンド業界に属していたので、日本での業界状況については比較的肌感覚があるものの、アメリカでは業界の規模も構造も日本とは異なるので、最近の潮流を理解する事を主目的にConferenceに参加する事にしました。
Conferenceは金曜の朝一からスタートするため、木曜の授業が終わってから家に帰り、ハノーバーからバスでニューヨークへ向かいました。ハノーバーは意外に交通の便が良く、学校のすぐ近くからボストンとニューヨークに直接向かうバスが毎日出てます。ボストン市内までの所要時間は2時間半、ニューヨークのグランドセントラルまでの所要時間は5時間となっており、日本に住んでいた時は長いと感じましたが、アメリカではこの位の移動時間は普通のようです。ちなみにボストンからニューヨークへ向かう場合も車だと45時間かかるため、あまり大差がありません。
ちなみにボストン=ハノーバー間の移動でも頻繁にお世話になっているDartmouth Coachと呼ばれるバスはこんな感じです。席が広めなのできっと想像よりも快適だと思います。
 


木曜の20時頃にニューヨークへ着き、ホテルへチェックイン後、同じくPE Conferenceに出席するためにニューヨークにきた日本人同級生と、久しく食べていなかった焼肉を食べるべく牛角に向かいました。牛角に着いたのは9時過ぎでしたが、20分位待ってようやく席へ案内されました。日本人客もそこそこいましたが、ニューヨーカーも結構多く、日本酒をぐびぐび飲みながら牛角の飯を楽しんでいる外人を見て何だか不思議な気持ちと嬉しい気持ちがこみ上げました。アメリカでは牛角は日本のような低価格チェーンという位置づけではない様子で、何を頼んでもクオリティが高くおいしかったです。外食としての日本食に飢えていた僕らと嫁達はメニューに興奮しながらどんどん料理を頼み、牛角に感動しながら夜がふけていきました。

翌日のConferenceでは、Keynote Speaker2人と、複数のテーマ毎に35人位のパネルがモデレーターの進行のもとで議論を交わすといった内容でした。私はファンド業界にいたこともあって、業界に関するマクロ的な理解に関しては、ある程度想定していたものを確認できたといった感じでしたが、個別の詳細なテーマに関する議論からは興味深い情報や気づきを得られました。
Operational Improvementという名のセッションでのKey Pointsは、

  • Financial Engineering(簡単に言うと財務レバレッジをきかせる事で投資リターンを上げる事)やマクロ要因(景気、株式市場の上昇)によるリターンの向上が難しくなっており、同時に競争激化によって投資価格水準が上昇しているため、ここ数年は以前よりも会社の収益力を高めることに、より焦点が当たっている
  • 投資先の会社において、経営改善による収益力の向上を実現できる力がPE Firmに求められているため、「本物」と「エセ」の違いが鮮明になるとともに、「エセ」PE Firmは今後ファンドレイジング(新規ファンド組成のための資金調達)がより難しくなり、市場からの退出を迫られる可能性が高い
  • PE Firmがファンドレイジングをする際に、投資家(ファンドの投資家、業界用語でいうLP)が最近よく聞く質問としては、過去の成功案件において、どの点においてPE Firmが付加価値を生み出したか?つまり、PE Firmが高いリターンを出せたのは、仕込が良かったからか(安く買えた)、レバレッジなのか、投資期間中の経営改善によるものなのか、それとも売却のタイミングが良かったのか、などを明確にしたがる
  • 最近では投資案件を執行するのが難しくなっているため、投資戦略に一貫性のない企業もいるが、LPとしては新規にお金を入れるとしたら投資戦略の一貫性を重視する
  • PE Firmで働く側の人間としての注意点としては、Financial(数字面に焦点をあてた分析)とOperational(実務的な経営面、現場感)の両方の視点を持つことが重要。単に数字面でシナリオを分析するだけでは、実際にどう現場で実行するのかという視点に欠けるが、一方で現場での戦術に焦点が当たり過ぎて、どこでどのように収益力を高めるのか、何をどの程度達成したら会社全体としての価値が高まるのか、という肝心な部分を見逃してしまう
1時間のセッションの中で、パネルの方々の具体的な成功事例や実際の投資家との最近の会話などを交えなが各自の主張を聞くことができ、密度の濃いセッションでした。
昼のKeynoteスピーカーはヘルスケアに強みを持っているPE FirmManaging Directorの講演でした。数字やアニメを使いながら淡々としている、でもモノトーンではない、知的なプレゼンでした。PE業界は成熟産業となっており、市場のピークを過ぎた現在においても、会社としての明確な強みを持ち、適切な戦場で戦えば引き続き成功し続けるというメッセージが強かったです。ヘルスケア業界に関しては、最近のアメリカでの医療保険制度改革は根本的な問題を解決しないという事を非常に分かりやすく説明し、その問題解決のために彼の会社が投資先の会社を通じてどのような事を行っているかについての話は大変興味深かったです。高齢化社会が進む日本でも、国が医療関係に費やしている税金の増加が問題になっていると思いますが、確かにそもそも社会全体としての医療費の増加をどうやって抑えていくか(減らすのは現実的じゃない気がするので)に関して、もう少し一般的に議論が進んでもよいのではないかと感じました。
今日は夜がふけてきたので、続きは次回Part 2として書きます。

Y.I (T’14)