2012年12月23日日曜日

Why MBA? Why Tuck? S.Y. (T’14)

今回は私のWhy MBA? Why Tuck? をご紹介したいと思います。MBA受験で成功を収めるのに必要な要素は色々ありますが、やはりエッセイやインタビューにおけるこの2つの問いに対する回答が重要となってくることは間違いありません。又、アプリケーションの段階からしっかりと考え抜くことで、ともすれば忙しさに振り回されがちな留学本番でも、きちんと取捨選択して充実した学生生活を送れると感じています。この記事がご自身のWhy MBA? Why Tuck (or other schools)? を考える上で少しでもお役に立てば大変幸いです。

まず簡単に私のバックグラウンドから。私は入社以来5年間、総合商社のインフラ系の部門に於いて海外発電事業者(Independent Power Producer = IPP)向けの投資業務に携わって来ました。一つ大きな転機となったのは入社2年目で、部門内に既存投資先の経営管理を主たる目的とした部署が新設され、そこに異動となったことです。

会社としては90年代から海外発電事業者向けの投資を始めており、私が入社する少し前からここ数年で一気に資産の積み増しを行いましたが、その結果、新規案件発掘と既存案件管理を一つの組織で同時に行うことが非常に難しくなり、機能を分けることになった次第です。資産の積み増しを行ったと書きましたが、比較的安定したリターンが得られるインフラ事業向け投資の人気はここ数年さらに高まっています(実際にはイメージほど簡単なものではありませんが)。結果として激化した競争の中、新規案件獲得は益々難しくなっており、又、新しく案件を獲得できたとしても投資に対するリターンは先駆者利益を得られた過去の案件と比べ、ずいぶん低くなってしまっているのが現状です。

かかる状況下、すでに保有している投資先の資産価値をいかに向上させていくかが以前よりさらに重要な課題となっている一方で、私自身、又、組織としても具体的かつ有効な施策については未だ手探りの域を出ていないように感じていました。そこで、次のステップに進むにあたってはより包括的な事業経営に関する知識が必要だと思い、MBA出願を決めました。

又、入社してからずっと海外事業に携わっていたとは言え、新設部署での業務は出資先に関する本社へのレポーティングが大部分を占めておりました。今後、会社の持っているポートフォリオ全体の価値を向上させるような積極的な施策(出資先を連携させてベストプラクティスの共有を促進する、組織を跨いでバリューチェーンの拡大を図る、等)を自らが中心となって講じるには包括的な知識を得ると共にリーダーシップやチームワークといったソフトスキルを鍛えることが欠かせないと思ったのが出願を決めたもう一つの理由です。

次にWhy Tuck?についてですが、私の場合は学校を絞り込むにあたってはざっくり以下の3つの切り口から考えました。

General Management教育に定評がある

②チームワーク/グループワークを重視している

③大都会でない

それぞれの要素についての詳細は以下の通りです。又、下線部Fall A, Fall Bと三ヶ月に亘るcore termを経ての私の感想です:

     General Management教育に定評がある

私が身を置く業界に於いて、取り組む業務に関する専門性は当然必要であると思う一方で、今後利益の柱として益々事業投資に舵を切っていくことが予想される中、その投資の成果を最大化するためにはどの分野でもある程度鼻が利き、またそれらの分野を統合して物事を分析したり、決断を下すことができる全般性、もしくは事業の経営力が同じくらい重要になってくるのではないかと考えております。そうした考えからmarketing school, finance schoolと呼ばれる学校よりも各分野の繋がりを意識したカリキュラムを組み、ソフトスキルの育成にも力を入れているgeneral management schoolを志望するようになりました。

⇒この点に於けるTuckの徹底ぶりは想像以上でした。学んでいる授業ごとに思考がサイロ化されないよう一つの授業で学んだことを他の授業の課題でも適用することが頻繁に求められるので、得た知識を有機的に繋げていく必要があります。Fall Bに於いてその傾向は特に顕著で、例えばFall Aで履修した統計学やミクロ経済の教授がDecision Science(エクセルを用いたモデリングの授業)に登場し、モデリングのテクニックをどの様に各分野へ応用していくかを説明する講義がありました。又、どの科目に於いても常にGeneral Managerとしてどのように情報を分析するか、その分析をどのように意思決定に活かすか、という視点が強調され、細かいテクニックにこだわり過ぎたり、正しい回答が一つであると決め付けたりしないよう繰り返しリマインドされます。統計学の授業で人気教授の一人であるKopalle教授の「この授業を通してあなたたちには①現実にある問題を咀嚼しstatistic languageに置き換え、②それを統計のテクニックを活用することで解き、③回答を今度はmanagement languageに戻し、意思決定や指示に繋げられる能力を養って欲しい」というコメントが実際のビジネスの現場に於けるManagerとしての判断力を鍛えることに如何にTuckが拘っているかを端的に示しており、とても印象に残っています。


     チームワーク/グループワークを重視している

元々個人よりも組織で成果を出すことに喜びを感じる自分の性格上、チームワーク/グループワークを重視した学校の方が肌に合うだろうな、と思っていた一方であえてそうでない学校に身を置いて、チームワークよりも個人としての突破力を伸ばすことにチャレンジしてみてはどうだろう、という考えもありました。この点は少々悩みましたが、結局先に挙げたソフトスキルの強化という観点で弱みを補うことに注力するよりも強みを伸ばすことに注力する方が成果を出す上で効率が良いだろうと結論に至りました。

Personal Leadershipというリーダーシップ系の科目でも再度強調されますが、 Tuckではリーダー一人で達成できることには限界があるという考えの下、リーダーに求められる役割とは組織の目指すべきビジョンを明確に示し、メンバーの協調的、自律的行動を最大化しながら目標を達成していくことと考えています。私自身、実際にバックグラウンドの異なるスタディグループのメンバーとFall A, Fall Bを通して色々な課題に取り組む中で、自分のこれまでのスタイルでグループに貢献するだけでなく、意識的に強い語調で議論をリードしたり、わざと反対意見を延べたりと、リーダーシップやチームワークの引き出しを増やす試みが出来たように思います。ただまだまだチャレンジが足りていないと個人的には反省しており、Winter Termから始まる新しいメンバーでのスタディグループやクラブなど課外活動に於いて失敗を恐れず新しい試みにチャレンジするつもりです。Tuckのようなチームワークを重視している学校だからこそそういったチャレンジや学びの機会が多いのではないかと思います。


     大都会でない(注:≠(ド)田舎である)

これは②とも関係しますが、大都会にキャンパスがあると学校が終わるとどうしても学生が散り散りになってしまう一方で、郊外/田舎にあると学校が生活の場の中心になるので他の学生との交流が密になるという話を在校生や卒業生の方から聞き、判断基準のひとつとしました。ただ留学前の数年間は東京のど真ん中でこれ以上ない便利な生活をしていたことから、あまり田舎すぎるのもちょっと辛いかな・・という気持ちから「田舎がいい!」というよりは「大都会は嫌!」という若干腰が引けた表現になっているものです。

⇒通ったことがないので都会にある学校の様子については分かりかねますが、たしかにTuckのように田舎にある学校の場合は良くも悪くも生活の中心はキャンパスにならざるを得ないので他の学生との交流は非常に容易です。授業が終わった後もキャンパスの中で適当に勉強場所を見つけて座っていると誰かしら立ち寄って翌日の宿題から次の休暇の予定までつい色々な話題について話し込んでしまいます。又、キャンパスを歩いていてもすれ違う人は大体知り合いなのでここでもついついお喋りに花が咲いてしまい、結果的にお迎えに来てくれている妻を待たせることになり、いつも怒られています・・街全体の娯楽が少ないからかオンキャンパスのパーティーが非常に多く、これも交流を深める上では欠かせない行事です。これらはやはりキャンパス最寄(そして唯一)のスターバックスまで少なく見積もっても歩いて10分かかるTuckだからこそ成せる業(?)ではないでしょうか。ソフトスキルの向上という目的とは別に、単に仲の良い友人を多く作るという面でもTuckの環境は非常に好ましいと思います。

尚、街に一つしかないスタバまで歩いて最低10分と聞くと日々の暮らしに困るほど田舎なのでは?と懸念を持たれるかもしれませんが、その点についてはLife in Hanoverという投稿にてフォローしていますのでぜひご一読いただければと思います。

と、こうしてみると、Tuckに入ってみてたしかにすごく自分に合った学校だったと実感する一方で、受験の段階では上記基準で絞り込んでも、他にもいくつか同じ特徴をウリにした学校があったためTuck一校には決められませんでした。では最終的にどのようにTuck一校に絞り込んだか。ここからは急に感覚的な話になってしまい申し訳ないのですが、結局実際にビジットしてみて在校生と話をしたり、キャンパスを回ったりして、ここに通う自分がイメージできるか、どうかという観点で決めました。

ちなみに今年1月にTuckをビジットした際、私が居心地を良くしているのを見てか、同行していた妻がボソッと「うん、ここは受かる気がする」と言っていたのが現実となったので、気づかぬ間にfit感が面接官にも伝わったのかもしれません。(同じタイミングで他にビジットした学校では妻の同様の一言はなく見事2waitlist入りでした・・)

長々と書いてしましたが、MBA受験や学校選びに関する私の個人的な意見をまとめますと:

ü  自分の中に明確な動機であればWhy MBA? Why This School?に対する回答は突飛でなくても良い

⇒私のケースも一般化すれば自社の海外展開の過程で発生したジレンマの解決を目的としておりそれは何ら真新しい回答ではないと思います

ü  基準を設定すれば志望校はある程度までは絞り込めるが、最後は自分の感覚

⇒言い訳がましいですが、ビジネスでも全ての局面においてロジックで決まるとは限らずいざという時の直感も大事なのではないかなと・・

ü  その感覚を確認するにあたってはやはりキャンパスビジットをするのが一番

⇒これは自信を持って言えます。百聞は一見にしかず、やはり実際に自分の目で見るのと話で聞いたりWEBで見たりするのでは印象が大きく異なることは多くあるので可能な限りビジットをお勧めします

の三点です。 

今年受験される方はいよいよ2nd Roundの準備も大詰めで非常に大変な時期ですが、体調にはくれぐれも気をつけていただければと思います。私も去年の12月から1月にかけてはかなり肉体的/精神的に辛かったものの、周囲の協力を得ながら何とか乗り切ることが出来ました。皆さんの受験が満足の行く結果で終わりますよう勝手ながら応援しております。

以下、ここを選んでよかった!と思えるMy Favorite Places at Tuckです。


Stell Hall。ちょっと暗いので勉強する上ではベストスポットではありませんが歴史を感じて落ち着きます。
自宅のあるSachem Villageに隣接しているフィールドです。サッカーフィールド10面分くらいあり、とにかく広いです。
寮の外観です。今はさすがに無理ですが寒くなる前は疲れたら芝生で昼寝が最高に気持ち良いです
S.Y (T'14)